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E46M3 DIYでCSLスタイルカーボンエアボックスに交換する場合に考慮が必要なこと4

2024年12月13日
2026年8月15日 更新

TunerProで表示したVEマップ

これまでのコンテンツでは、通常のE46M3にCSLスタイルカーボンエアボックスを装着した後に発生する、低回転域のジャーキング防止(純正CSLには装着されている吸気口フラップとシュノーケルがない場合)のチューニングアプローチについて書いてきました。

そして最後の仕上げはアイドリング調整です。

コールドスタート時(エンジンが冷えているとき:特に冬)とエアコンを入れた時、アイドリングがハンチング(上下に激しく揺れる)することがあります。

この1年、Turner製とKarbonius製のエアボックスをそれぞれ装着した2台のM3で、それぞれチューニングを行なってきましたが、どちらもVEマップとアイドリングデューティーサイクルの調整で修正可能でした。

今回のコンテンツではそのアプローチをメモしておきたいと思います。

アイドリング調整のアプローチ

IATセンサーのスケーリングが間違っていないか?

IATセンサーから得られる電圧を温度に変換するスケーリングマップがあります。

通常M3はMAFに統合されたタイプですが、CSLは独立タイプです。

以下は僕がやらかした話なのですが、

僕は、CSLコンバートキットのIATセンサーが、統合タイプの配線を使っていることから、通常M3のスケーリングを使っていました。調べてもどっちを使うべきかわからなかったので...

いくらVEマップを調整しても、冬やエアコンオンの時にアイドリングがハンチングしてしまうことから、スケーリングをCSLに変えてみたんですよね。

あからさまに安定するようになりました(笑)。

全域でのトルク感もアップ(したような気が?)しました。

以前も、スケールの違いによる動きの変化は試したんです。その時は変化を感じられなかったので標準M3のスケールでいいかと判断していたんです。夏だったからかな..

ハンチングが出るのは限定的だったし、自分の車だったから、どうでもいいやと放置していました。でもオーナーさんからチューニングを頼まれたので中途半端はいかんと原因追求しました。

VEマップの調整

VEマップ上の、充填効率10%分はアイドル調整に使われているようです。

訂正(2026/8):桁が違いました。アイドルが載っているのはVEマップ縦軸の 1.15%付近です(アイドルバルブの最大開口面積 137mm² ÷ K_AQ_ABS_MAX 11918mm²)。 回転数スケーリング kl_aq_rel_rf_fakt が870〜900rpm で 0.70 なのを考慮しても 実効インデックスは約1.64%にとどまります。

VEマップの縦軸が 1.611% 以下に 0.098 / 0.146 / 0.195 / 0.391 / 0.610 / 0.806 / 1.001 / 1.099 / 1.196 / 1.392 / 1.611% と11点も細かく刻まれているのは、まさにこのためでした。 「10%分」ではなく「いちばん下の11行」と思ってください。

※この1.15%という数字は計算値で、実車のアイドルバルブ開度が上限にあるとは限りません。 実際に調整するときはデータログで自分の車のアイドル動作点を確認してください。

VEマップは日常領域の燃料噴射量決定のためのメインのマップです。

一般的な車両などは、アイドルコントロール用の噴射マップがあるようですが、CSLには無さそうです。

なので、データログにおいてアイドリング領域の燃料噴射量がピタッと合えば治るはずです。

ハンチングは、ECUがO2センサーのフィードバックを受けて空燃比を合わせようとした時に、制御が追いついていない時に起こるようです。

追記(2026/8):エアコンONのときのハンチングについては、その後もっと直接的な原因が 見つかりました。Terraさんの改造BINで、充填レギュレーター適応のタイマー K_FR_T_ADAPT を 読み出す幅が1バイト足りず、4.06秒であるべき値が1.50秒として動いていた、というバグです。 詳しくは第6回に書きました。

ですのでアイドリング中(特にハンチングしている時)のデータログをとってチューニングしてみて、治ればそれで良いと思います。

スロットルコントローラーの交換

上記2つの対応をしても治らない場合は、スロットルコントローラーを変えてみるといいかもしれません。

これ、通常のM3でもアクセルをラフに踏むとガクガクする症状がありますよね。こいつの交換で治るようなので、アイドリングも治るのかもしれません。(試してない)

コミュニティーではVEマップの調整だけで治るとおっしゃっている方もいるので、スロットルコントローラーを交換してみた結果を教えて欲しいです。

アイドリングデューティーサイクルの調整

TunerProで表示したアイドリングデューティーサイクルマップ

上記の対応をしてもダメな場合、アイドリングのデューティーサイクルを上げてみると落ち着く事が分かりました。通常運行マップとコールドスタート(触媒温度上昇)マップがあるので、両方の値を調整してみます。

補足(2026/8):この2枚は KF_LLS_TV + (AVAN1_SOLL_FAKTOR × (KF_LLS_TV_KATH − KF_LLS_TV)) という形でブレンドされます。 触媒暖機が終わると AVAN1_SOLL_FAKTOR が 0 になってブレンドが消えるので、 コールドスタート側(KF_LLS_TV_KATH)は暖機後のエアコンONハンチングには効きません。 冷間の症状にだけ効く、と切り分けて調整してください。

僕は、スロットルコントローラーを変えずにやっているせいか、ある程度収まりますが、完全には抑えきれていません。

でも十分かな。

ガクガクも気になるので、資金調達できたらスロットルコントローラーを変えようかな。

制御の説明

VE制御とかデューティーサイクルってなんぞや?という部分について説明しておきたいと思います。また、VE制御とAlphaNの違いについても書いておきます。(チューニングコミュニティの中でも間違った認識をしている方が多いので...)

なお、この説明はChatGPT o1の出力をもとに修正を加えたものになります。

VE制御(スピード・デンシティ方式)とAlphaN制御

訂正(2026/8)— 一般論としての説明は概ね合っていますが、0401 をどちら側に置くかが逆でした

以下の解説そのもの(VE制御とAlphaN制御の一般的な違い)は、大枠として妥当です。 ただしCSL 0401 は「VE制御(スピード・デンシティ)」側ではなく、AlphaN 側でした。

逆アセンブルで k_rf_cfg(0xE5E4)= 18(0b10010)が確認できました。

  • bit0 = 0 → MAP由来の充填量 rf_p_saug を負荷として使わない
  • bit2 = 0 → MAF(HFM)経路を使わない(k_rf_hfm_cfg 0xD202 も 0)
  • bit4 = 1 → MAPによる積分補正だけ有効

つまり負荷は「スロットル開口面積 × 回転数 → 充填量」の前向きモデルで作られていて、 これは下の「AlphaN制御」の項で僕自身が書いている定義、そのものです。 MAP は rf_p_saug_i という1本の積分補正としてしか効かず、その権限は k_rf_p_saug_i_min/max(0xE5EE / 0xE5F0)で ±2.5 %RF に固定されています。 しかもゲインマップ kf_rf_p_saug_i_gain(0xE63A)は36セル中29セルがゼロで、 アイドル域では積分そのものが止まります。

正確に言うなら「MAPによる ±2.5 %RF の補正付き Alpha-N 制御」です。

なお、マップを「VEマップ」と呼ぶこと自体は間違いではありません。 このマップの出力が RF(相対充填量)=容積効率相当だからで、定義ファイルも 「CSL Alpha-N マップであり、主たる容積効率テーブル」と両方を書いています。 間違っていたのは方式の分類の方でした。

以下は当時の理解のまま残します。

VE制御(スピード・デンシティ方式)とAlphaN制御は、いずれも「エアフローセンサー(MAF)」を使用せず、理論モデルを元にエンジンへの燃料噴射量を決定する方式ですが、入力パラメータと適用状況に差異があります。

VE制御(スピード・デンシティ)

特徴:吸気マニホールド圧力(MAP)と回転数、吸気温度、さらには事前に設定されたVEテーブル(充填効率テーブル)を用いて、エンジンがどれほど空気を「効率良く」取り込んでいるかを推定する方式。

メリット: 吸気系変更に対する柔軟性:MAF撤廃による配管自由度向上と、タービン変更など仕様変化時の再マッピング容易化。 過渡特性改善:理論モデルで瞬時の燃料補正ができ、スロットルの急変化にも適応しやすい。 センサー故障時のフェイルセーフ:MAF異常時のバックアップとしても機能。

適用例:米国車の一部、アフターマーケットECU、レース用ECU、またはMAFと併用する現代のハイブリッド戦略。

AlphaN制御

特徴:主な入力はスロットル開度(Alpha)とエンジン回転数(N)のみ。MAPセンサーを使用せず、スロットル開度を「負荷の代替指標」として扱う。VEテーブルのような物理モデルに基づく空気量予測ではなく、スロットル角度と回転数に応じて燃料噴射量を補正する簡易モデル。

メリット: 極端な吸気系変更(例えば独立スロットルボディー(ITB)を持つ高回転型レースエンジンなど)でも安定した真空信号(MAP)が得られない場合に制御可能。 導入が比較的簡易で、最小限のセンサーで動作可能。

デメリット: スロットル開度と実際の空気量が必ずしも一致しないため、負荷変化や気温・気圧差異による補正が難しく、精度に劣る。 日常使用や多様な条件変化には不向きで、主にレース用チューニングなど特定条件下で最大性能を狙う場面で用いられることが多い。

まとめ: VE方式はMAP、回転数、温度といった複数パラメータを用いるため、理論的な空気流量をモデル化しやすく、幅広い状況で安定した燃調が可能です。 AlphaN方式はスロットル角度と回転数のみを用いるシンプルな手法で、MAP取得が困難な環境や特殊なエンジン仕様には対応しやすいが、汎用性や精度はVE方式に劣ります。 VE制御はより精密で汎用性の高いシステム構築を可能とし、AlphaNは特定の環境下(主にレース用エンジン)でのシンプルな制御手段として存在するという点で差別化できます。

デューティーサイクルとは何か?

デューティーサイクルは、モーターやバルブなどを「オン・オフ」を高速で繰り返して出力を制御するための割合(比率)のことです。たとえば、100%が常に「オン」、0%が常に「オフ」とすると、50%は半分の時間だけオンになっていることを意味します。この割合を変えることで、出力(回転数や開度など)を細かく調整できます。

アイドル時の電スロデューティーサイクルとは?

車のエンジンがアイドリング状態では、エンジンを止まらず安定して回し続けるために、電子スロットル(電スロ)が微妙な開度調整を行います。スロットルはモーターで開閉されますが、そのモーターをどれくらいの割合(デューティーサイクル)で「オン」にするかで開度を調整します。

「アイドル時の電スロデューティーサイクルマップ」とは、アイドル状態を維持するために、さまざまな条件(エンジン温度、外気温、負荷状態など)に応じて「この状態なら、だいたいこれくらいのデューティーサイクルを使おう」という基準値を表にしてまとめたものです。

訂正(2026/8)— アクチュエーターを取り違えていました

KF_LLS_TVLLS は Leerlaufsteller = アイドルエア・バイパス弁のことで、 電子スロットル(EDK)とは別のアクチュエーターでした(TV は Tastverhältnis=デューティ比)。 電スロは電スロで、独自の位置PID(KL_EDK_PPOS/PNEG/IPOS/INEG)を持っています。

デューティーサイクル=「オンにしている時間の割合」という説明自体は、 ソレノイドバルブの制御としては正しいので、そこはそのままです。

また軸も違っていました。KF_LLS_TV の2軸は x = エンジン回転数[500〜7000rpm]/y = アイドル時の要求空気量 ml_ll[11〜85 kg/h]で、 エンジン温度や外気温の軸はありません。 出力はデューティ%で、K_LLS_TV_MIN = 14% 〜 K_LLS_TV_MAX = 97% にクランプされます。

このマップがあることで、エンジンコンピューター(ECU)は以下のような状況でアイドル回転数を素早く安定させるために、スロットル開度を適切に調整できます。

  • 寒い朝の始動時
  • エアコンがオンになったとき
  • バッテリー電圧が低下したとき

これにより、車は常にスムーズなアイドル状態を保ちやすくなります。

訂正(2026/8):バッテリー電圧の補正経路は、この校正では死んでいました。 電圧補正項は KL_LLS_UB_KORR(0x9DC0)という曲線を通るのですが、 このカーブは5点すべてがゼロなので、項そのものが恒常的に 0 になります。 0401 で電圧低下時にアイドルデューティが補正されることはありません。

“M”のチューニングアプローチ

僕のM3はMAPセンサーありのVE制御でチューニングしています。

訂正(2026/8):正確には「MAPによる ±2.5 %RF の補正付き Alpha-N 制御」でした。 MAPセンサーは付いていて、実際に読まれてもいます(k_rf_cfg bit4 = 1)。 ただしその役割は負荷の主入力ではなく、±2.5 %RF に制限された積分補正です。 詳しくは上の「VE制御とAlphaN制御」の訂正に書きました。

ブリッピング時のサウンドにこだわっているので、現時点ではKarboniusよりTurnerの方が好みです。(Evolveのサウンドはどうだろうな〜。)

マフラーは音量抑制の為にノーマルのままがよく、排気ガスの掃気力向上の為にサクラムクロスパイプ(等長後のクロスによる引く力の上昇)が良いと考えています。

この仕様で約1年半(そのほとんどはIATスケールを間違えていましたが)、気温変化(-10℃〜39℃)も、高低差(標高600m〜1100m)も激しい北杜市で乗り続けてみて、急勾配(概ね10%以上)かつ3500rpm以下でのトルク感以外で、不便はありませんでした。

走行距離は年間10,000kmほどです。

今回紹介したマップ名

参考として、今回のコンテンツで挙げたマップ名をまとめておきます。

なお、定義ファイル(XDF)はこれまでのコンテンツとは異なり、コミュニティーで新たに公開されたものを使用しています。

  • VE: Density Correction_VOLUMETRIC EFFICIENCY (RF)
  • VE(コールドスタート): Density Correction_VOLUMETRIC EFFICIENCY (RF) - WARM-UP
  • アイドリングデューティーサイクル: Idle Controller_DUTY CYCLES(KF_LLS_TV)
  • アイドリングデューティーサイクル(コールドスタート): Idle Controller_DUTY CYCLES - CAT HEATING(KF_LLS_TV_KATH)

追記(2026/8)— 現行の定義ファイルでの名前

上の名前は当時使っていた定義ファイルのものです。現在コミュニティで公開されている CSL_0401_Karter16_v3.6 では名前とカテゴリが変わっているので、対応表を置いておきます。 (v3.6 に Density Correction というカテゴリは存在しません。)

当時の呼び方 v3.6 での名前 XDFアドレス カテゴリ
VE kf_rf_soll (CSL Alpha-N) 0xD2FE CSL Specific
VE(コールドスタート) kf_rf_soll_kath (CSL Alpha-N Cold) 0xD718 Lasterfassung
アイドリングデューティーサイクル KF_LLS_TV 0x9DE2 Leerlaufsteller
同(コールドスタート) KF_LLS_TV_KATH 0x9F16 Leerlaufsteller

関連投稿

そういえば

もう廃業されてしまったBWIさん経由でAlpha-NチューニングをしたM3はどうしたかな。

純正CSLのパラメータのまま、最大トルクのみ抑えてリニアに回転が上がるようにしたんだけど..

おそらくIATのスケールが間違っていて、冬のテストをしてないからどうなってるんだろうか..

もうちょっと低回転の最大トルク上げてもいいかなとも思ってます。

書き換えた後は結構ハードに試運転して、快適に走ったから夏は問題ないと思うのだけれど..

もし心当たりあるオーナーさんがこのコンテンツをご覧になられたら連絡ください。

VE制御にも切り替えられるので、色々相談に乗れたらいいなと思ってます。

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